コンプライアンス研修の目的設定方法と、研修成果をあげる10のポイント
目次
コンプライアンス研修は、企業にとって非常に重要な施策のひとつです。ひとたび、コンプライアンス問題が発生すると企業にとって大きな損失が発生します。具体的には、行政罰、逮捕や懲役、刑事罰、民事上の損害賠償責任、さらに、レピュテーションリスク(信用棄損リスク)などがあり、億単位の損失が発生するケースも珍しくありません。
だからこそ、企業は、きちんと設計をした成果のあがるコンプライアンス研修を実施する必要があります。この記事では、コンプライアンス研修の目的の設定方法や研修効果をあげる具体的なポイントを解説いたします。
コンプライアンスの歴史と語源は?
「コンプライアンス」、法令遵守などと訳される、この言葉は、テレビや新聞などメディアでもたびたび紹介され、最近では、少なくとも言葉だけは、知っているという方の方が多いのではないでしょうか?
このコンプライアンスという言葉は比較的新しい言葉で20世紀後半に米国で最初に提唱された言葉のようです。(「コンプライアンスの起源と歴史」 中央大学 吉田博清)
また、(「企業法とコンプライアンス 第3版」「郷原信郎著 東洋経済新報社」によれば、日本でも2000年頃からコンプライアンスという考え方や企業における対応の必要性が提唱されてきており、ここ数十年で一気に浸透した言葉と言えるでしょう。
コンプライアンスの語源には、諸説ありますが、「complete 完全に・完成する」と、「supply 供給する」という2つの単語から来ているといわれており、従うことにより完全なものを提供するという意味があるようです。(「コンプライアンスの考え方」浜辺陽一郎中公新書)
現代社会におけるコンプライアンスの定義とは?
先ほどご紹介した語源だけを考えると、法令を守ってさえいればいいとも考えられがちですが、現在のコンプライアンスに対する考え方は、より高度になってきています。単に、法令を遵守するのみならず、より発展的な意味内容となっているのです。
その証左として、例えば、京都市が定めた京都市職員コンプライアンス推進指針では、「法令に従い,これを確実に守るという基本を徹底するとともに,常に『法の一般原則』に立ち返り,創造的かつ主体的に職務を遂行すること」と定義されています。
もちろん、定義には、様々な考え方がありますが、京都市の考え方や、ここ最近の社会の反応などを見ていると、コンプライアンスの定義のひとつとして、「社会の要請に応えること」と、定義できるかもしれません。
法令を守るのみならず、株主、取引先、消費者、こういった社会全体からの要請に丁寧に応えていくこと。
企業は、社会の公器であると自覚し、どう取り組むのか?という視点をもつことが、コンプライアンスといえるのではないでしょうか?この考え方は企業のCSR(社会的責任)といった考え方に繋がります。
「コンプライアンス」を守るのに関連してくる法令の数は?判例も抑えておくべき?
「法律」と名前がつくものだけでも2,000前後。政令や省令などを加えると7,000以上あると言われています。(会社コンプライアンス 内部統制の条件 伊藤真 講談社現代新書)端的に、膨大であると言わざるを得ないでしょう。
とはいえ、コンプライアンス研修においては、この中で、どのような法令が自社と関係が深いのか?特にリスクが高いのはなにか?より深く理解しておく必要があるのか?などを検討しておく必要があります。
また、法令などに加え判例も適宜抑えておく必要があります。なぜならば、判例において、同業他社並みのリスク管理体制の必要性に言及されたものがあるからです。
この事件は、大手乳飲料企業の取締役が、デリバティブ取引において533億円を超える損失を発生させたことによる、企業の内部統制システム構築義務違反を問われた事件で、同社の義務違反を否定した判決です。この判決の中で、東京高裁は、「他の事業会社において、採られていたリスク管理体制に劣るようなものではなかったということができる」と判じ、同業他社並みの管理水準があれば足りることを示したものです。なお、この事件は、原告により上告されましたが、上告棄却、上告受理申立不受理の決定により終了しており、最高裁も、高裁の判断を是認しています。(東京高判H20.5.21、最二決H22.12.3資料版商事323号11頁)
このことから、同業他社のコンプライアンス違反に関する判例は、きちんと精査しておく必要があるといえるでしょう。
コンプライアンスリスクが発生した場合の損害とは?実事例は?
コンプライアンスリスクが表面化した場合、企業はさまざまな損害を負うことになります。具体的には、企業名の公表や過料といった行政罰、逮捕や懲役、科料等の刑事罰、民事上の損害賠償責任などを会社はもちろん、経営者や、場合によっては社員個人が負うことになります。さらに、メディアに報道されること等によるレピュテーションリスク(信用棄損リスク)が発生すれば、売上の低下も発生するでしょうし、取引先や消費者などへの影響も小さくないでしょう。
損害額は、企業規模やその態様によって、大きく違うものですが、数億円規模になってしまうことも珍しくありません。実際に一例をあげると、
・2018年 大手油圧機器メーカーによる免震・制振オイルダンパーの検査データ改ざん問題では、144億円の引当金を計上
・2015年 大手化学製品メーカーの免震用ゴムの試験データ偽装問題では、関連する特別損失が累計1134億円に
・2018年 大手ゼネコンによる鉄道に関する談合事件では、関係した大手企業に対して、罰金2億円と、罰金1億8千万円(求刑罰金2億円)の判決
などがあり、各々、大きく報道され、会社も関わった個人も大きな責任を負うことになっています。
コンプライアンス研修とは?コンプライアンス研修の定義とは?抑えておきたい3つの条件
これまでにご説明したことを踏まえて、コンプライアンス研修を定義するならば、次の3つの条件を満たしたものがコンプライアンス研修のあり方として有効なものであると言えるでしょう。
➀会社や社員が遵守すべき法令について正しく理解していること
②会社の規定などが法令や判例等の要請に合致しており(もしくは研修を通して規定等を要請に合致するように調整してあり)、これを、社員が理解し、正しく運用されていること
③研修が、社会の要請に応えるための取り組みがなされるキッカケになっていること
➀と②は、会社を守るという観点からも、特に重要なポイントです。コンプライアンス研修を実施したが、それに対応するルールが定められていないというケースは少なくありません。自社のみにおいて研修を実施することも研修頻度をあげるためには大切な取り組みですが、併せて、弁護士などの外部の専門家を頼り、様々な視点から、コンプライアンス研修を実施し、それを機会にルールを定め、アップデートしていくということも検討しておくといいでしょう。
また、③についても、最近ではESG投資といった言葉がバズワードになるなど、非常に注目されている分野ですので、研修の際などに併せて、社員同士で意見交換をする場などを設定するといいでしょう。
コンプライアンス研修、受講者の5つの分類と、主だったテーマ(ネタ)とは?
コンプライアンス研修と一口にいっても、その内容は多岐にわたります。そこで、ここでは、どのような種類があるのかを確認していきましょう。
まず、受講者の分類として、大きく、分けて次の5つに分類できます。
➀取締役等の経営層
②マネージャーなどの管理職
③一般社員
➃中途入社者
⑤新入社員
取締役等は、会社を運営する立場にあり、コンプライアンス体制の構築義務など、重い責任を負っています。特に、新任取締役などには、研修という形で体系的な理解をさせる必要もあるでしょう。また、管理職も取締役よりは軽いものですが、一般社員よりも重い体制構築義務を負っているといえるでしょう。従って、研修を通して学び、体制を構築するといった取り組みが必要となります。
一般社員においても、何がダメで、何がいいのか?といったことを学び、最前線でコンプライアンス違反が発生しないようにする必要があるため、研修等を通して社会や会社が何を求めているかを、繰り返し伝えておく必要があるといえます。
中途入社者においては、他業種からの転職で入社している場合は特に、業界の標準知識が不足している可能性があるため、役職に応じた研修を実施する必要があるでしょう。
新入社員においては、残念ながら、日本の報教育は十分であるとは言えず、法的リスクの判断ができないということがあるため、教育的な観点からも、会社のリスクを減らすといった観点からも、一般的な事柄から丁寧に教育していく必要があります。
また、コンプライアンス研修の具体的なテーマ(ネタ)としては、次のようなものがあげられます。
■全体に関する問題
・コーポレートガバナンスと内部統制に関する問題
■偽装・欠陥問題
・データ偽装、表示偽装問題
・製品や商品の欠陥
■会計・金融関連
・粉飾決算対策等の税務・会計コンプライアンス
・インサイダー取引
・事業会社の金融取引における留意点(金融商品の購入/子会社・関連会社向け融資等)
・企業情報の適正な開示(主に上場会社)
■取引先等に関する問題
・債権管理等、取引先の信用リスク管理
・不公正な取引と、下請法違反
・価格カルテル/談合
・取引先等他社の営業秘密
・独占禁止法
■会社が保有する情報に関する問題
・営業秘密管理や技術管理等の情報漏洩に関する問題
・情報セキュリティ問題
・個人情報保護
・インサイダー情報
■M&A/海外関連
・M&Aに関するリスク管理
・海外での事業展開におけるリスク管理
・海外競争法
・海外特許侵害
■知的財産等に関する問題
・不正競争防止法
・知的財産権の取得・利用・管理に関する法的リスク
■労務問題リスク
・採用~退職までの様々な労務問題リスク
・セクハラやパワハラ等のハラスメント問題(管理者、一般社員、相談対応担当)
・働き方改革関連法対応(
・労災対応
■名誉棄損とリスク対応
・週刊誌等、メディアからの名誉棄損
・インターネット上の名誉棄損
・競合他社への誹謗・中傷行為
■経営者や役員の不祥事対応
・業務上横領
・飲酒運転、道路交通法違反
■その他、従業員の不正や過失への対応
・業務上横領
・飲酒運転、道路交通法違反
・通勤や商談時等の交通機関等利用時におけるリスク管理
・SNSの取り扱い
・各種業法等への対応
・契約書のポイント研修
■その他
・クレーム対応
・反社会的勢力との取引の防止や解消
・公害や廃棄物処理等の環境保護
・施設や店舗等における安全管理
ご覧いただいたとおり、全ての企業に必要なものもあれば、ある会社にとっては不要なものもあります。
従って、自社には、どのような内容の研修が必要なのかを改めて検討しておく必要があるでしょう。また、コンプライアンス研修の受講者が経営に関する立場なのか?管理者なのか?メンバーか?などによっても、なにを学ぶべきか?は変わってきますので、何を学ばせる必要があるか?とともに、誰に、どんなことを学ばせる必要があるか?といった観点からも、よく検討する必要があると言えるでしょう。
コンプライアンス研修の目的と具体的な目標設定のポイントと具体例
コンプライアンス研修の実施を検討する場合、定期的に実施している、同業他社で大きな問題が起こった、組織再編によって異動するものが多くでる、新入・中途社員が入社する、上席者から指示があったなど、いくつかのパターンがあるかと思いますが、その研修を実施したことの成果を最大化させたい場合は、きちんと目的と目標を設定する必要があります。
会社の究極の目的としては、「法令違反などのコンプライアンス違反を発生させず、社会の要請に応えていく」といったことが考えられますが、一足飛びにこれを実現するのは難しいもの。そこで、目的や目標を細かく設定していく必要があります。
まず、会社としての目的や目標は、多くの場合、次の2つになるでしょう。
➀会社で働く人間が法令違反を起こさないようにすること
②会社が法令違反を起こさないための仕組みができていること
1つ目の会社で働く人間が法令違反などを起こさないようにするためには、多くの場合、「人材」の問題となりますので、正しく研修や教育を行う必要があります。この点については後述します。
2つ目の会社が法令違反を起こさないための仕組みづくりでは、「規定の整備やマニュアルの整備、場合によっては担当者の選任や担当部署の設置」などが該当するでしょう。この点については、研修を行ったが、該当する社内規定ない。マニュアルがないというケースが散見されますので、研修の実施と併せて、規定やマニュアルの整備等を実施していく必要があるでしょう。
従業員個人(人材)としての目的やも、目標は、先ほどご紹介したとおり、対象者を分類し、目的と目標を細かく設定していく必要があります。
また、よくある失敗例としては、コンプライアンス研修を実施するも、会社の実態と大きく乖離していたり、研修内容で説明した内容に対応する規定や仕組みが不足してしまうことです。
一例としては、
対象:新入社員
目的:社会人としての一般知識としてのコンプライアンスに関する知識の習得
目標:法令に関する知識の習得、会社の方針の習得、会社の規定の習得、トラブル発生時やコンプライアンス違反の可能性のある事柄に接した場合や、悩んだ場合の行動規範の習得
対象:管理者
目的:社会人としての一般知識としてのコンプライアンスに関する知識の習得に加え、会社のあり方や体制構築に必要な知識の習得、体制整備のための具体的手段の習得
目標:法令に関する知識の習得、会社の方針の習得、会社の規定の習得、トラブル発生時やコンプライアンス違反の可能性のある事柄に接した場合や悩んだ場合の行動規範の習得、メンバーから相談をされた場合の対応方法の習得、メンバーから積極的に相談をされるための行動態様の習得、会社をよりよくするための提案ができるための知識と、体制整備のための具体的提案方法の習得
などです。
より具体的に、例えば、管理者が、「2020年新パワハラ法に対応するハラスメント研修」を受講したケースで考えてみましょう。
2020年新パワハラ法では、パワハラの法制度化により、パワハラの法制度化と罰則規定の明記がなされており、パワハラ法に関するコンプライアンス研修では、どのような内容がパワハラに該当するのか?どのような指導をするべきかを学ぶとともに、厚労省が示す措置義務(企業として対応が必要な事項)などが説明されると思います。
この場合、会社としては、パワハラ等のハラスメント問題を発生させないこと、さらに言えば、ハラスメントが置きづらい組織づくりをしていく必要があるため、これが会社の目的となります。そして、この目的を達成するためには、人材の教育と、規定やマニュアルの整備が必要になります。
一方、「人材」(研修を受講するもの)にとっての目的と目標としては、受講した管理者本人として、どのような内容を学び、自分の行動を省み、自分自身の行動をどう変えるのか?メンバーから相談された場合にはどうするのか?他部署等でハラスメントに該当する恐れのある場面に遭遇した場合に、どうするのか?といった、行動変容に関する目的・目標設定をすることが妥当といえるでしょう。
さらに、会社として規定やマニュアルを整備する点については、厚労省が示す措置義務(企業が対応が必要な事項)と自社の状況を比較し、きちんとした体制が会社にとれているのかを確認し、規定やマニュアル、体制など(例:就業規則の変更や相談対応部署の設置等)について、不足する点があれば、改善できるよう担当部署に依頼したり、会社へ提案したりできているか?などが具体的な目標となります。
これらの目的・目標を予め設定し、研修受講後にレポートやアンケートなどで、受講者に問うことによって、コンプライアンス研修の成果は大きく変わってきますので、ぜひ、取り入れてみてください。なお、一口にコンプライアンス研修といっても、テーマは多岐にわたります。そこで、自社だけでは、ここまでできないという場合は、外部の専門家や研修会社等に相談し、コンプライアンス研修を実施する目的と、目標を事前に、具体的に設定しておくといいでしょう。
目的・目標設定以外のコンプライアンス研修の成果をあげるための9つの工夫ポイント
目的・目標設定のほかにも、コンプライアンス研修の実効性や成果をあげるために工夫できるポイントがありますので、ここでは、その方法を解説いたします。
➀実施のタイミングを検討する
同業他社や、報道などで取り上げられるような大きな問題が発生した場合、それは、自社にも発生しうる問題です。業界新聞や組合などの社外との情報交換をとおして、しっかり情報を収集しておき、適切なタイミングで実施する必要があります。同業他社と同水準のコンプラアインス対策を講じる必要性は、冒頭でご説明した大手乳飲料メーカーの判例の示すとおりです。(東京高判H20.5.21、最二決H22.12.3資料版商事323号11頁)
また、大きな人事異動などがあった際には、知識の高いレベルでの平準化を図るため、都度、実施する必要があると言えるでしょう。逆に言えば、次のようなことがあった場合は、実施を検討すべきと言えるでしょうし、受講者も自分事化しやすいと言えるでしょう。
・同業他社などで問題が発生した場合
・法改正があった場合
・会社の規定や組織変更があった場合
・新入社員や、中途入社の社員など、社員が増えた場合
・社内の人事異動などがあった場合
②定期的に実施する
人は忘れやすい生き物です。特に、コンプライアンス研修は、残念ながら「面白い」とは、なかなかなりにくい研修となりがちです。だからこそ、繰り返し伝えていく必要があります。また、一回ごとの実効性や成果をあげるためには、きちんとレポートなどを提出させるという方法も有効ですし、社員同士で議論をする場を定期的に作るといった機会を提供することも有効です。
③研修の対象によって、目的や内容を、きちんと変える
この点は、先ほどご紹介したとおりです。立場によって、同じ内容でも必要な取り組みは変わってきますので、きちんと分解し、各々の立場に最適な研修を設計する必要があります。
➃自社の規定や事例等に沿った研修やテストを行い、本人にとってのリスクも理解させる
この点については、2つのパターンがあります。
1つ目は既に規定やマニュアルなどが正しい状態になっているケースです。この場合は、コンプライアンス研修の内容に自社の規定を確認するという項目を入れるといいでしょう。例えば、○○を行った場合、当社就業規則に定める〇条記載の懲戒規定に則り、○○という処分になる。と伝えることです。これにより、もしも自分がコンプライアンス違反を行った場合の処分内容を正しく認識させるのです。更に社内で実際に、懲戒にした事例がある場合は、個人情報等に十分配慮したうえで当該事例を伝えることも有効です。社内に事例がない場合は、他社の事例から、本人が損害賠償責任を負うなど、不利益な状態になる実例などを示すことで、当事者意識を持たせることができるでしょう。
2つ目のケースは、自社の規定やマニュアルが不十分なケースです。この場合は、事前に規定やマニュアルを整備するなどの事前の策を打つ必要があります。なお、マニュアル等に関しては研修をとおして、どう改良するかを参加者に議論させるという方法もあります。
⑤社内アンケートの実施と、グループワークの実施
どんなことも改善をするためには、現状の把握というフェーズが必要になります。現状の把握をすることにより、問題点と課題を抽出することが改善の第一歩です。コンプライアンス研修を実施する際、狙いとしては、コンプライアンス違反を発生させないということがあります。研修の機会に、自社の課題をメンバーの意見も含めて適切に認識し、更に、アンケートから得た意見も踏まえてグループワークをすることでメンバーにもコンプライアンスを考えることに巻き込んでいくことができ、研修効果を高めることができます。
なお、社内アンケートだけ、グループワークだけの実施という方法でもいいでしょう。
⑥コンプライアンス違反と思しき問題に遭遇した場合の行動を要請する
御社は、社員がコンプライアンス違反と思しき問題に遭遇した場合、どのように行動してほしいかを明示していますか?この点をきちんと徹底できていないケースは意外と多いものです。
どのように行動して欲しいのかは、きちんと明示しなければ、そのように行動してはくれません。
ぜひ、研修の際に、どのように行動して欲しいのかを明示しましょう。
⑦コンプライアンス違反に対する会社側の窓口を示し、窓口からも情報を発信する
例えば、とある大手建設業の企業の事例では、内部通報窓口を用意していたが、社員がセクハラ以外は相談できないものと思っていたという事例などもあります。(大きなコンプライアンス違反事件があった後の第三者委員会レポートより)
このように、会社が対策を用意していても、それが社員には伝わっていないというケースがあります。
なにかがあった場合には、⑥で、どのように行動して欲しいのかを明示することが必要だと説明しましたが、どこに相談すればいいのか?どのようなことが相談できるか?といった情報も併せて発信することも大切です。コンプライアンス研修の際はもちろん、日頃から窓口からの発信をするようにしましょう。
⑧レポートや、テストなどを実施して、理解度を確認する
コンプライアンス研修を実施する際には、目的、目標を設定するといいとお伝えしましたが、研修後には、レポートやテストを実施し、どれくらいの成果が得られたのかを確認しましょう。もし、理解度が低い社員がいた場合には、再度、研修を受講させたり、別途レポートを作成させるなど、理解が進むまで根気強く接する必要があります。
⑨必ず参加させる
これは、基本中の基本ですが、必ず全員に参加せるようにしましょう。オンラインやeラーニング等を活用する、複数日程を用意する、録画などで、見逃してしまった社員にも共有するなどの対策が考えられます。
また、研修実施前に、社員のリストを作り全員が参加できているかをチェックできるようにしましょう。
コンプライアンス研修と併せて、実施したい5つのコンプライアンスリスク対策
これまでに、ご説明してきたことと、重複しますが、コンプライアンス研修と併せて実施したい対策をご紹介いたします。
対策事例としては、次の5つです。
➀規定や方針等の整備と周知
②マニュアルの整備
③定期的な社内アンケートの実施
➃相談窓口の設置
⑤相談窓口からの定期的な情報発信
きちんと予防をするためには、➀規定や方針等の整備と周知と②マニュアルの整備が重要になります。また、この中では、もしもコンプライアンス違反をすると、本人に対して、会社がどのような処分をするのか?といったことを規定し、周知しておく必要があります。
次に、早期発見のための③定期的な社内アンケートの実施、➃相談窓口の設置、⑤相談窓口からの定期的な情報発信が重要になります。
万が一の場合にも、早期に発見できる体制を作っておくことで、社会に対する影響も、会社の損害も最小化することができますので、この予防と早期発見体制のための5つの施策が重要であると言えるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?コンプライアンス研修の目的と成果を最大化させる10のポイントと題し、目的・目標の設定のほか、➀実施のタイミングを検討する、②定期的に実施する、③研修の対象によって、目的や内容を、きちんと変える、➃自社の規定や事例等に沿った研修やテストを行い、本人にとってのリスクも理解させる、⑤社内アンケートの実施と、グループワークの実施、⑥コンプライアンス違反と思しき問題に遭遇した場合の行動を要請する、⑦コンプライアンス違反に対する会社側の窓口を示し、窓口からも情報提供を実施、⑧レポートや、テストなどを実施して、理解度を確認、⑨必ず参加させるといった具体的な方法を解説させていただきました。
ぜひ、少しでも取り入れてみていただき、社会からコンプライアンス違反がなくなることに少しでも寄与できれば、幸いです。
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当社では、コンプライアンス研修の成果の最大化を図るための各種施策を実行しつつ、研修講師を法律の専門家である弁護士が講師を務めるコンプライアンス研修を実施させていただいております。
特長:法律の専門家である弁護士が講師を務めます。
日程:ご相談に応じて実施させていただきます。複数日程での開催でのご相談や、録画へのご相談も承ります。
時間:1時間から承ります。また、テーマ単位でのご希望も承ります。(例:クレーム対策のみ等)
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対応エリア:全国対応可能です。
実施方法:リアル/オンライン/録画いずれの方法でも承ります。
実施までの流れ:お問合せ → ヒアリング → 課題の特定・設定 → 当社にて、最適な資料作成及び弁護士のアサイン → 実施
FAQ:
Q.事例などは用意してもらえますか?
A.はい。当社にてご用意させていただきます。また、もしも御社社内での実事例があれば、その内容も是非、研修に組み込んだものにさせていただきたいと思います。
Q.全社員を対象としたものは開催可能ですか?
A.はい。可能です。ただし、立場によって、取り組むべき内容が変わってくるため、ポイントになる点全てについては全員に受講いただくか、ポイント部分だけ、別途説明会を開催していただくなど、なにかしらの工夫を一緒にご検討させていただければと思います。
Q.オンライン開催も可能ですか?
A.はい。オンラインでも実施させていただいております。また、録画にも対応させていただいております。その他のご要望にも前向きに対応させていただいておりますので、ご不明点あれば、お気軽にお問合せください。
当社では、個別にヒアリングを実施させていただいて構築する研修のほか、基本メニューとして、次の研修をご用意させていただいております。また、基本メニューについても、個別にカスタマイズさせていただいておりますので、ぜひ、お話をお聞かせください。
当社で実施しているコンプライアンス研修の基本メニュー例
当社では、個別にヒアリングを実施させていただいて構築する研修のほか、基本メニューとして、次の研修をご用意させていただいております。また、基本メニューについても、個別にカスタマイズさせていただいておりますので、ぜひ、お話をお聞かせください。
1.ハラスメント研修
2020年に施行された改正労働施策総合推進法(通称パワハラ法)。一方、見落としがちなのは、パワハラ法については、中小企業の対応は2022年4月からの対応で良いと考えがちですが、既に男女雇用機会均等法により、セクハラやマタハラについての措置義務(対応が必要な事項)は発生していることから、実質、中小企業を含めた全ての企業にハラスメント対策義務があります。
そこで、どのようなことに気をつけるべきか?どのような対策を講じれば、厚労省が定める措置義務をクリアできるのかといった具体的な方法を、弁護士が解説します。
■管理職向け
【弁護士解説/新パワハラ法対応】 指導とハラスメントの境界線
【弁護士解説/新パワハラ法対応】厚労省が求めるハラスメント対策と導入の具体的手順
■一般職/管理職向け
【弁護士解説/新パワハラ法対応】 生産性を低下させない正しい指導とハラスメントの境界線
他社様では、あまり実施されていませんが、管理職と一般職に、同内容の研修を受講いただくことで、指導と、パワハラの境界を双方に理解いただき、マネージャーが正しい指導ができることで、生産性を向上させるという趣旨の研修です。
■相談対応部署
【弁護士解説/新パワハラ法対応】ハラスメント相談への対応方法
2.業種別コンプライアンス研修
全ての企業に求められるコンプライアンスですが、業種ごとに注意すべき点は違っています。そこで、業種ごとに判例や事例を分析し、業種ごとリスクの高い領域と、各々注意点を弁護士が解説いたします。
例)【弁護士解説】IT企業のためのコンプライアンス研修
談合/カルテル、偽装、情報流出、ハラスメントを中心に解説
■業種例
・IT企業
例)談合/カルテル、偽装、情報流出、システム開発、ハラスメントにフォーカスした研修
・製造業
・建設業
・不動産業
・金融業
・運輸業
・広告業
・全般
・その他
3.職種別/ジャンル別コンプライアンス研修
■取締役等
【弁護士解説】取締役の法的責任と役割
会社法・会社が抱える法的リスクの横断的理解と、取締役等の幹部社員に求められているリスク管理能力を高めるための研修です。ケースによっては、取締役個人が損害賠償請求をうけることや、株主代表訴訟などが発生することなどから、単に法律の解説にとどまらず、具体的な事例や方策を含めてわかりやすく解説します。
【弁護士解説】従業員の不正に対する対応方法と予防の実務
悲しいことに一定の割合で発生してしまう、従業員の不正問題。具体的な事例を基に、どのように対応をすることになるのか?また、予防するため施策には、どのようなものがあり、具体的に、どう準備するのか?といった内容を研修を通してご説明いたします。
■人事/管理職向け
【弁護士解説】2020年最新判例を踏まえた同一労働同一賃金のポイントと導入方法
2021年4月から中小企業も対応が必要となる同一労働同一賃金。この法律のポイントと、具体
的な導入方法をご説明いたします。
【弁護士解説】2020年最新判例を踏まえた同一労働同一賃金対応のフリーランス活用と、活用時の実務的/法的注意点
2021年4月から中小企業も対応が必要となる同一労働同一賃金。この法律の概要と、業務の切り分け方、また、単純作業などのアウトソース方法と、その注意点についての研修です。
【弁護士解説】副業/複業導入における企業側注意点
副業を認めることで、採用がしやすくなっている昨今、副業制度を新たに導入する企業も増えてきています。しかし、安易に認めてしまった場合、企業にとってリスクが発生するということを認識しきれていないケースが散見されます。そこで、副業/複業を導入することのメリデメと、企業が対応しておくべき具体的事項についての研修を実施します。
【弁護士解説】テレワーク対応の労務と情報セキュリティ
テレワークを導入していても、就業規則などが曖昧な場合、企業にとって大きなリスクになります。どのようなリスクに注意すべきか?当該リスクをどうしたらヘッジできるか?情報セキュリティという点にフォーカスし、研修を通してお伝えいたします。
【弁護士解説】テレワーク対応の就業規則と労務
テレワークを導入していても、就業規則などが曖昧な場合、企業にとって大きなリスクになります。どのようなリスクに注意すべきか?当該リスクをどうしたらヘッジできるか?といった点を、就業規則をどう変更すべきか?といった具体的な内容まで踏み込み、研修を通してお伝えいたします。
【弁護士解説】残業/解雇/未払い給与等、人事と経営陣が把握しておくべき労務管理
労働者との問題で、特に多い、残業/解雇/未払い給与の問題にフォーカスした研修です。いざというときに備えて、どのような準備をしておくべきか?日々の労務管理はどうすればいいのか?といった具体的なアクションプランにまで落とし込んだ研修を行います。
【弁護士解説】募集/採用/選考の労務
人材不足が叫ばれている昨今、いかに良い人材を集めるか?は企業にとっての永遠の課題といえるでしょう。一方、人材募集の段階や、選考段階での失敗によって、風評被害など大きなダメージを追ってしまうことも少なくありません。そこで、採用を最大化しつつも、いかに適法に実施するか?という視点で実施する研修です。具体的な採用方法ごとに事例を用いて解説します。
【弁護士解説】モンスター社員/問題社員対応の実務と法務
海外ではToxic Worker(有毒社員)と呼ばれ、他の社員の生産性低下など悪影響も叫ばれているモンスター社員。ハーバードビジネススクールの調査によれば、モンスター社員(有毒社員)の悪影響は一般社員2人分に相当するともいわれています。そこで、本研修ではモンスター社員が発生した場合、どのように対応をすべきか?また、平時から、どのような対策をとっておくべきか?をお伝えします。
【弁護士解説】高年齢者雇用安定法に沿った継続雇用制度導入のポイント
高年齢者雇用安定法に基づく高年齢者雇用確保措置の一環として、「定年の引き上げ」「継続雇用制度の導入」「定年の廃止」のいずれかの措置が企業には求められています。そこで、本研修では、継続雇用制度の概要や対象者、実際に継続雇用制度を導入する際の流れなどをご紹介します。
■広告・広報
【弁護士解説】広告/広報の法務
ウェブ、DTP、CM。広告を打つ際にも法的リスクを検討しておく必要があります。大きな予算をかけて広告を準備しても、著作権や肖像権などに触れてしまうと、当該広告によって、逆に損失を受けてしまうといったケースもあります。そこで、主に、管理職や、広告/広報担当者に向けた法的リスクにフォーカスした研修を行います。
【弁護士解説】SNS活用と情報セキュリティの法的注意点
最近では、SNSを活用した情報発信の効果が注目を集めています。気軽に使えるからこそ、多くの人に使われていることが利点ですが、この利点は、企業にとって、ときにリスクになります。営業秘密が開示されてしまったり、不適切な投稿によって批判を集めてしまったりするリスクがあるのです。つまり、SNSの活用にはルールが必要なのです。そこで、どのようなリスクがあり、当該リスクは、どうすればヘッジできるのか?を研修を通してお伝えします。
■IT部門担当者等
【弁護士解説】改正民法対応システム開発、ソフトウェア契約のリスクとトラブル対処法
システム開発やソフトウェア契約は、トラブルが多発している領域です。導入したものの使えないケースや、高額な追加費用がかかり、プロジェクトが頓挫してしまうケースなどが散見されます。そこで、本研修では、改正民法と判例をふまえ、トラブルの具体的な対処方法などをお伝えします。
■全社/クレーム対応部署
【弁護士解説】クレーム対応のポイントと法的注意点
モンスタークレーマーという言葉が登場するなど、行き過ぎと判断されるような消費者も出てきています。一方、クレームには、自社サービスを向上させる重要なヒントも隠されているケースもあり、慎重な対応が必要な場面ともいえるでしょう。では、企業は、どのような準備をし、どのような対応をする必要があるのでしょうか?対面、メール、電話など様々なケースを想定して、具体的な対応方法やルール作りについて研修します。
■リスク管理部署/取締役等
【弁護士解説】不祥事発覚時の法務/緊急時の対応体制とコンプライアンスリスク管理
不祥事が発生した場合、どのような対応をすべきでしょうか?平時から準備をしていなければ、緊急時混乱してしまうことは必至です。そこで、過去の事例を参考に、損失を1円でも少なくするには、どのような対応をすべきか?平時から準備しておくべき事項はなにかといった観点で、研修を実施いたします。
【弁護士解説】判例・事例に学ぶ債権管理・債権回収の具体例と抑えておくべきポイント
未払い。ほとんどの企業で、残念ながら経験したことのあるトラブルの種類ですが、このトラブルを防ぐためには、契約前の信用調査、契約中の債権管理、トラブルの火種発生時の対応、トラブル発生時の各々のタイミングでいかに、いかに迅速かつ正確なアクションを起こすか?で債権回収可能性は変わってきます。
そこで、債権管理・回収のご担当者へ向けて、日常的な
■法務等管理部門
【弁護士解説】不公正取引リスクと、下請法違反対策
企業名の公表等の罰則や罰金のある下請法違反。どのような場合に違反になり、どのような場合には違反にならないのか?下請法違反を代表とする不公正取引を横断的に理解し、浸透させることが企業には求められています。本研修では、過去の事例や判例を踏まえて、どのようにリスクヘッジをしていくべきか?を解説します。
【弁護士解説】知的財産の取得・管理と、利用方法
企業にとって、大きな武器となる知的財産権。しかし、まだまだ、その活用方法などはしられていないというのが現実です。また、安易な行動で他社の知的財産を侵害してしまい、大きなペナルティを受けるというケースも珍しくありません。そこで、本研修では、知財の横断的理解と、活用・管理方法と、他社の知財を侵害しないための具体的な方法などを研修を通してお伝えします。
■上場企業、上場を目指す企業向け
【弁護士解説】インサイダー取引のリスクと、防止方法
インサイダー取引は、金商法によって禁止された犯罪行為です。メディアでもインサイダー取引に関する報道がなされるなど、発生した場合、企業に大ダメージを与えてしまう大きなリスクです。
一方、言葉はなんとなく理解していても、具体的にどのような行為が罰則の対象になるかといった理解をしていないケースも散見されます。そこで、本研修では、インサイダー取引の横断的な理解と、過去の事例などを踏まえた防止方法などをお伝えいたします。
■海外事業関連
【弁護士解説】海外への事業展開を検討している企業が知っておきたいリスクとリスクヘッジ方法
グローバル化の進展により、海外拠点を作るケースや越境ECなど、海外を視野にいれたビジネスが増えています。しかし、全てがうまくいくわけではありません。ときに、撤退を余技なくされるケースも散見されます。
そして、その損害は、事前にリスクを正しく見積もっていたか否かによって、大きく変わっていくものです。そこで、本研修では、海外事業を展開する場合の留意点とリスクの見積もり方、事前にステイしておくべき撤退プラン等について研修を通して、解説いたします。
■管理職向け
【弁護士解説】部下を指導するうえで抑えておくべき労務管理
初めて部下を持つ方や、既に部下を持っている方に向けた研修です。コンプライアンス・ハラスメント・メンタルヘルスなどの基本や、ハラスメントに該当する行為と、該当しない指導はもちろん、具体的な指導方法にまで踏み込み、部下のモチベーションを維持する方法や、具体的な1on1の方法などまで、他社の事例を参考にした研修を実施します。
【弁護士解説】改正民法を踏まえた契約書のチェックポイント
改正民法を踏まえたうえで、一般的な契約書作成の手順から無効にならなための方法、相手方から提案された契約条項のチェックポイントと、修正依頼方法、トラブル発生時の具体的な対応方法などについて、研修を通して解説いたします。
■新入社員向け
【弁護士解説】ビジネスにおける法的リスクの基礎と理解
残念ながら、日本において法教育は十分であるとはいえません。従って、新しく社会人になる新入社員は法的リスクを正しく理解していないケースがほとんどです。そこで、ビジネス全体における法的リスクを、その大きさとともに解説します。
具体的な事例や判例を参考にした問題を一緒に考えていく方法で、新入社員の法務力を底上げします。
【弁護士解説】改正民法を踏まえた契約書のチェックポイント
改正民法を踏まえたうえで一般的な契約書作成の手順から無効にならなための方法、相手方から提案された契約条項のチェックポイントと、修正依頼方法、トラブル発生時の具体的な対応方法などについて、研修を通して解説いたします。
その他
基本メニューをカスタマイズしたコンプライアンス研修やオリジナルのコンプライアンス研修についても、ご相談を承っておりますので、ぜひ、下のお問合せフォームから、お気軽にご相談いただければ幸いです。
「トラブルをひとつでも少なく」することで、生産性の低下を防ぎ、社会をよりよくすることをミッションとする企業。550人以上の弁護士、その他、会計士、税理士、社労士、行政書士等、全体で700人以上の士業との繋がりを活かし、トラブルを予防するための方法や早期解決のための情報を発信。
生産性低下防止サービスや、コンプライアンス研修等の企業研修、弁護士費用保険の販売、弁護士などの士業の無償紹介など、多様なサービスを展開。